木材
ボディトップ材はカーリーメープル、ボディバック材とネックはマホガニー、指板はローズウッドです。
ボディトップ材はカーリーメープル、ボディバック材とネックはマホガニー、指板はローズウッドです。
鉋で裏表を平面に削り厚みを調整します。このモデルの場合は厚みは17ミリです。
鉋で裏表を平面に削り厚みを調整します。セミホローボディのこのモデルの場合は40ミリですが、ソリッドモデルの場合はもう少し薄くしています。
図面またはテンプレートからボディの輪郭を写します。
輪郭を鋸で大まかに切り抜いてから鉋・ノミ・小刀などを使って形を整えます。テンプレートを使用してルーターで整形する場合もあります。
日本の鋸は引いて切る方式で、西洋のものに比べると薄い刃です。その特徴を活かしてこの写真のように刃を曲げながら湾曲した部分を切ることができます。よく切れない鋸で力で切ろうとすると刃を折ってしまうので、よく切れるように整備しておく必要があります。
この時点では輪郭が綺麗に揃っていませんが、前段階の加工で極力輪郭が揃うように加工しておくことで、この後の作業が楽になります。
ノミや鉋・サンダーなどを使って輪郭を整えます。ボディの裏表に対して側面がしっかり直角になっている必要があります。
輪郭を合わせたらボディの内側をくり抜くためにトップとバックを離します。
セミホローボディではこのように内部をくり抜く準備をしています。
テンプレートを使用してルーターで切削することが多い作業ですが、ノミを使ってやることもあります。
ノミによる切削加工が終了した様子です。ボディを閉じてしまえば見えなくなる部分ですので、もう少しラフな加工でも構いませんが、一つ一つの作業を丁寧にやることを心がけます。
ノイズ対策用の塗料(炭が原料)を塗っておきます。
ピックアップホールのガイド穴、ブリッジ、テールピース、電気部品などの取り付け穴を開けた様子です。
このモデルはネックの差込角を3.5度に設定しています。鉋でトップのネック側に3.5度の傾斜を作っています。
トップのアーチを鉋やノミで削って作っていきます。手速く作業するために曲率の異なる鉋をいくつか用意して臨みます。望みの曲率が得られない場合は鉋を自作することもあります。
鉋やノミで削ったアーチをスクレーパーやヤスリを使って仕上げます。
糸鋸で切り抜き小刀で仕上げたサウンドホール。
トップのアーチに合わせて裏側も削ります。求める音質によって板厚を調整しますが、倍音成分を得るための特殊加工(当工房独自)を施すこともあります。いずれの加工も材料の響き具合を耳で確認しながらその程度を決めます。
倍音を得るための特殊加工をしていない場合はこのような仕上がりになります。
バックと同様にノイズ対策用の塗料(炭が原料)を塗っておきます。
当工房ではすべてのギターで木工用ボンドと膠を使い分けて接着しています。ここは修理などで剥がすことは稀なので木工用ボンドで接着しています。
接着が終了したボディ。ピックアップホールを掘る準備をしたところです。
ルーターを使うことの多い加工ですが、ノミでやってしまうこともあります。
ピックアップホールとピックアップの隙間が小さいのが好きなので割とギリギリの加工をすることが多いですが、あまりこだわる必要はありません。ルーターで切削した場合はこのような確認作業はやりません。
ネックポケットとバインディング溝の加工を残して、ほぼトップの加工が終わった様子です。
ルーターを使って加工する場合もありますが、当工房ではこのような自作の道具を使ってバインディング溝の加工をしています。
ノミで溝を仕上げていきます。ルーターを使う場合はトップのアーチ加工前(トップが平面のうち)に行う方がやりやすいのですが、手道具を使う場合はどのタイミングでもやれます。
バインディング接着面をヤスリで均して溝の加工は終了です。
樹脂製のバインディングを接着。事前にドライヤーの熱や温水でバインディングを柔らかくしてボディの形に曲げておくと接着が楽です。
接着剤でバインディングをボディに接着します。作業性の面では専用の接着剤を使うのが良いかもしれませんが、当工房ではアセトンを使っています。
ルーターを使う場合が多いかもしれませんが、当工房では主に鉋を使います。鉋なら自由にRを決められるのが良い点です。
このモデルの場合は角度付きネック材を使っています。ネック加工をする際には事前に指板面の直線と、指板面と側面の直角をしっかり出しておきます。
使用するトラスロッドの幅に合わせてケガキ線を入れている様子です。
畦引き鋸を使って溝の際に切り込みを入れている様子です。ルーターを使って加工することが多いと思いますが、この方法でやってもそれほど時間はかかりません。
ノミで掘った溝にトラスロッドを入れた様子です。トラスロッドを軽く押し込むとピタリとハマるように加工するのがポイントです。溝がキツいとネックに負担がかかりますし、ユルいとトラスロッドが動いて音響面に悪影響があるかもしれません。
ネックの差込角に応じてネックエンド部を切断します。
鉋やノミで微調整することもありますが、できれば鋸で一発で決めたいところです。
ネックと同じ材料でトラスロッドに蓋をします。細いネックの場合はトラスロッドとネックが面一になるように溝の深さを決めるのでこの工程は不要です。
適切な厚みになるようにヘッド部に鋸を入れています。
鉋や小刀を使ってヘッドの形を決めます。
ルーターを使う場合もありますが、たいていこのように鋸でネックの厚みを決めてしまいます。
使用する道具はだいたいこの程度です。写真には写っていませんが、さらに鉋を1、2丁使います。
鋸でネックポケットの際に切り込みを入れます。
ノミでネックポケットを掘っていきます。
すでに加工済のネックに合わせた深さまでネックポケットを掘った様子です。
この時点ではキツくてネックがハマりません。当工房では修理をやりやすくするために、この部分を膠で接着します。膠の場合は、木部に塗布したときに接着面が滑ること、接着面の密着度が低いと接着力が著しく落ちることがあるので、気持ちキツ目に加工をする必要があります。ボンドの場合は接着膜が膠に比べて厚いので気持ちユル目に加工します。
ネックの中心線とボディの中心線が一致するように微調整しながらネックポケットを仕上げていきます。
中心線・差込角が適切な状態でしっかり接合した状態。膠を使う場合は、この状態でネックを持って持ち上げてもボディが外れないくらいの加工精度が理想です。
このモデルではマダガスカル・ローズウッドの薄板を使っています。
小刀や鉋を使ってヘッドの形を整えます。
鉋や小刀を使って好みの握り形状を作っていきます。
最終的な形状は重量バランスや実際に演奏するときの具合を考慮して決めます。
使用するペグに合わせてヘッドに穴を開けます。特に指定がなければゴトーのペグを使っています。
鉋で指板材の厚みを調整します。鉋は堅木用に仕立てたものを使っています。
白引きでフレット位置に印を付けます。フレット位置の計算には自作のアプリ (https://guitar-calc.netlify.com) を使っています。
フレット溝用に仕立てた鋸でフレット溝を切ります。よく切れる鋸なので軽い力で引くだけで溝が切れますから、真っ直ぐな溝が切りやすいです。
鉋でネック幅に合わせて指板の輪郭を調整します。
ハンドドリルで掘った穴にポジションマークを埋め込んだ様子です。マークの接着には膠を使うことが多いです。
このモデルの場合は12インチRの指板面です。鉋で荒削りしてから専用のサンディングブロックで仕上げています。
ハンマーで打ち込んでいます。
ヤスリで約50度に削り落としたフレット端。ギターが組み上がった時点でフレットの擦り合わせをするときに仕上げます。
樹脂や薄板でトラスロッドカバーを作ります。
貝を切り抜いてヘッドのマークを作っている様子です。
椿の花をデフォルメした当工房のマークです。
ミニルーターを使ってマークを埋め込む溝を作っている様子です。ノミでやってしまうこともあります。
マークを埋め込み溝ができました。マークに対して溝をややキツく加工し、マーク側面をテーパー状に削って押し込むようにすることで、マークと溝の間の隙間が目立たないようにします。
膠でヘッドにマークを埋め込み接着。
ストラップピン取付部の加工をすれば木工や終了です。
膠でネックとボディを接着している様子です。膠は作業性があまり良くありませんが、温めれば綺麗に外れてくれるので修理のときに助かります。修理の対象になりがちな箇所は極力膠で接着するようにしています。
膠で指板をネックに接着します。膠は滑るので指板がズレないように注意してクランプします。
塗装前の状態をホワイトボディと呼びます。塗装が始まってからの修正はできませんから、この時点ですべての部品が適切に取り付けられかをしっかり確認します。
#120から#400程度まで段階的に目の細かいサンドペーパーに替えながら塗装面を均していきます。
砥の粉を使って木の導管を埋めていきます。写真は砥の粉を全体に塗り終ったところです。
砥の粉が半乾きの状態になったら布で拭き取るようにして余分な砥の粉を取り、さらに布で磨いていきます。導管が埋まるまで何度か繰り返します。
このモデルではバースト風の着色をしています。いくつか方法はありますが、この場合は濃い色を先に浸透させて、色を薄くしたい部分をサンドペーパーで削って徐々に薄い色を着けていきました。
濃い赤から黄へのグラデーションができました。最初に着色する赤がもっと濃いとよりはっきりとした杢が現れます。
塗装面を平滑にする・塗料の乗りを良くする目的でサンディングシーラーを使います。水性のサンディングシーラーを使っています。
水性ニス用の刷毛を使っています。サンディングシーラーは研磨してほとんど剥がしてしまうので、多少の刷毛筋は気にしません。
サンディングシーラーがよく乾いたら#400程度のサンドペーパーで塗装面を均すように研磨します。
マホガニーのような導管が大きな材料の場合、目止めで完全に導管が埋まっていない場合もあります。そんな場合はサンディングシーラーの塗布と研磨を何度か繰り返して導管を埋めながら塗装面の平滑を得られるまで続けます。
水性ウレタンクリアでの上塗りです。水性ニス用の刷毛にたっぷり塗料を含ませてから、器の縁などでよく刷毛をしごき気泡を追い出してから塗っていきます。
刷毛に含ませた塗料が少ない・気泡をしっかり追い出していない・刷毛を当てる力が不均一だったり強かったり、といった塗り方をすると刷毛筋や気泡が塗装面に残りやすいです。刷毛によって差が出るので、水性ニス用の刷毛をいくつか買ってその中から良いものを選びます。
#600から#1500の水研ぎ用のサンドペーパーで段階的に目の細かいペーパーに替えながら研磨します。当工房ではなるべく塗装膜を薄くするようにしているので、慎重に作業して塗装面が残るようにします。
水研ぎが終ったら何種類かのコンパウンドを使って磨き込みます。
望みの光沢が出るまでコンパウンド掛けをします。塗装面が熱の持たないようにあまり力を入れて磨かない方が良いです。
ヘッドの尖った角の部分は塗装の乗りが悪いことがあるので控えめに研磨します。
指板に傷を付けないように注意してフレットの頭にヤスリをかけていきます。ヤスリは専用のものを使っています。
牛骨のナット材を削ってナットを作り、弦溝を切っていきます。現溝を切るには専用のヤスリを使用します。
アース線はブリッジかテールピースのアンカーにはんだ付けします。このモデルの場合は、アース線・ピックアップのリード線・出力ジャックのリード線をサウンドホールから引き出し、配線したボリューム・トーンのポットとコンデンサーとトグルスイッチを、サウンドホールから入れて取り付けています。
配線が終ったらすべての部品を取り付けます。
弦を張り、オクターブ調整、弦高調整、ピックアップ高調整を行い試奏して出音確認をします。
DUNCANのJazzピックアップを搭載したセミホローボディのエレキギターです。クリーントーンからソフトディストーションまで程よいサスティーンと豊かな倍音を出すのを狙ったギターです。細めのネックと軽いボディは長く弾いて疲れない使いやすいギターに仕上がっています。